2011年11月20日 2

 部屋に入った。

同房達の視線が一斉に自分たちに向く。

 

T君がカンボジア語で「こんにちは」と言ったのを、自分もマネをして言う。

この時は多分、夜の9時を過ぎた位だっただろうか。

 

自分たちは入り口から一番奥の右に座った。

今日からここに寝るのか。

自分は周囲を見てキョロキョロするしかなかった。

すると、T君が囚人達と話し出した。

自分にも気軽に話しかけてくる。

思った以上の恐怖感はとれた。


***

緊張のあまり周囲を見ていなかったが、驚いた。

数人がタバコを吸っているではないか!

なんだこれは。自分にもタバコを差し出してくれる。一瞬ホッとした。

ここでは、自由にタバコが吸えるらしい。

 

***

 

消灯時間は何時なのか?そう考えているうちに

布団らしきものをカンボジア人がひきだした。

薄っぺらなゴザだ。

これ一枚では体が痛くて寝むれまい。

 

T君と自分はどこで寝ればいいのか話し合った。

どう見ても全員がここに寝れるのか?というスペースだ。

T君が「自分たちは新入りだからここの便所の前で寝ることになりますね。」と言った。

そう話し合っている途中、部屋のボスらしき人がこちらに来いと言う。

来いと言われても2mくらいしか離れてない。

行ったら、ボスが話しかけてきた。
「ここに二人寝ろ。」

と言っているらしい。

 

実はこのボスが自分の近くに寝かせた意図が、後ほどわかるのだが・・・・・。



2011年11月20日

この刑務所に来て、9日が経った。

逮捕されたのが11月8日。

 

入所日11月11日、拘置所滞在からたった3日で刑務所に移送されるなんて考えもしなかった。実際、刑務所に一歩足を踏み入れた瞬間怖かった。どうしようもなく不安だった。

本当に泣きたかった、逃げ出したかった。

 

言語が出来ない自分の唯一の救いは、共犯で捕まっているT君が一緒にいる事だ。

彼のことは後で詳しく書くが、彼はカンボジアに住んで2年。

英語もでき、カンボジア語も出来る。

 

T君と2人刑務所の入り口を入り、房へと続く道に入る。

入るとすぐにパンツ一枚にされ腕時計から全て身ぐるみを剥がされた。

情けなかった。50歳近くになってこれか。


房への入り口が近づく。

テレビで見るような海外の刑務所の光景。

日本の刑務所の方がマシではないか。そう思った。

 

房に扉の小さな小窓からカンボジア人らしき囚人が見ている。

入り口のドアが重く開く。

むせかえるような熱気、暑い。

10畳ほどの部屋に20人はいるだろうか。

参った。本当に参った。今日からここで生活するのか。。。